【カンブリア宮殿】メルセデス・ベンツ日本 上野金太郎社長
「メルセデス・ベンツってこんなことやっているんだなー」
「自分もベンツオーナーになりたいなー」
「敷居の低いショールームがあるなら、冷やかしてみようかなー」
今回のカンブリア宮殿を見て、こんなことを思ったらメルセデス・ベンツの思う壺。優秀なメルセデス・ベンツのマーケターの戦略にハマってしまっています。それが悪いことではないですが(笑)、今日はメルセデス・ベンツ日本の巧みなマーケティング戦略を紹介します。
メルセデス・ベンツ日本とは
そもそもメルセデス・ベンツ日本という会社は何をする会社なのか。輸入・販売促進・マーケティングする会社であり、メーカーでもディーラーでもない。車はドイツ本社から輸入して、販売戦略を策定して、日本のディーラーに販売目標と販売戦略を授ける会社のようです。
基本戦略
今回のカンブリア宮殿の本質は、あくまでもマーケティング戦略を紹介するものだと思うが、メルセデス・ベンツとしては顧客接点を増やして、販売台数を伸ばすことを目的とした放送のはずだ。
ベンツの一般的なイメージは高い、ラグジュアリー、ハイブランド、成功者、経営者。こういうものが思い浮かぶと思う。まさに高嶺の花。そうしたブランドイメージを崩さず、憧れに近づいてもらう戦略を取ったのが上野社長。AKB48を仕掛けた秋元氏の「会いに行けるアイドル」と近いものを感じた。憧れであってほしい、だけど親しみも感じてほしい。さほど遠い存在ではないのだよ、あなたが手を伸ばしさえすれば。そんなメッセージが伝わってくる。
単純接触効果を使って、なかなか手の届かないハイブランドに接触する機会を設けることで身近に感じてもらう戦略を取った。だからと言って、ブランドの価値を下げることはしない。
実現方法
メルセデス・ベンツ日本の存在価値は、あくまでもベンツの販売台数を増やすことにある。販売台数を増やすために、敷居を下げ、接触を増やし、以下のことを実施する。
- メルセデス・ベンツを憧れから現実的な目標にする人を増やす
- 無理してローンを組んででも買いたいという欲求を刺激する
- 安いアウトレット品から購入してもらい、特別なベンツオーナー体験をすることで、新車購入の欲求を刺激する
- 特別な体験を通じて、自分が特別な存在であるという承認欲求を満たす
- レンタカーでベンツ体験をし、新車購入欲求を刺激する
ではどのような方法でこれらを実現しているのか。
アウトレットモールでメルセデス・ベンツを販売
個人的に意外だったが、アウトレットモールでメルセデス・ベンツを販売している。ディーラーに足を踏み入れるのは敷居が高いが、「こういうところにあるとフラッと立ち寄ってしまう」 とアウトレットモールを訪れた人が話していた。
A180:新車販売価格390万円のところ294万円
C220d:650万円→417万円
アウトレットで販売している車両が新車よりも2-3割も安く、アウトレットで購入の9割がベンツオーナーとなっている。敷居を下げ、すそ野を広げることに貢献している。
レンタカー
Mercedes-Benz Rentという名称で展開するレンタカーサービス。10都道県で展開している。このサービスを利用するにはメンバー登録が必要になるため、まさに見込み客になる。ちなみにお値段は概ね国産レンタカーとほぼ同じ価格で借りられるという。レンタカーを利用した方は、「ベンツを欲しくなった」とコメントしていた(笑)そらそうでしょうとも。
車を売らないショールーム「Mercedes me」
Mercedes meというお店がある。そこは車を売るためのショールームではなく、オリジナルグッズ600種類を取り扱い、カフェや食事が楽しめる空間を提供している。またここで前述のレンタカーサービスも受けられるし、試乗もできる。Mercedesというラグジュアリーブランドを体験してもらおうというコンセプトだと思われる。
最初のお店は2011年六本木にメルセデス・ベンツコネクションというお店を1年半の期間限定でオープン。集客のために周りのコーヒーショップより30分早く開店、量も30%増量、価格も20%安くコーヒーを提供する。そうすると朝の固定客ができて、1年半90万人の人を動員し、翌年の販売台数は30%アップを実現している。この車を売らないショールームはドイツ本社にも理解され、今では世界170か国で同様のお店を展開している。
カフェの提供量も多めに、他店より安く提供した取り組みから察するに、恐らく一般庶民を相手にした商売だと思う。メルセデス・ベンツはもはやお金持ちのおじさんのブランドではなくなっていて、一般庶民にも販売しなければこの先やっていけないというベンツの危機感の表れだと思う。だからこそ敷居を下げ、ハイブランドにも親しみを持ってほしいという戦略に打って出たのだと思う。それを証明するのがリーマンショック以降の販売台数の落ち込みである。
ラグジュアリー体験を提供して、メルセデス・ベンツの虜にしてしまう
Mercedes meというお店は特別な体験を提供してくれる場所。
- 六本木など特別な場所
- 特別なカフェラテ
- 特別なバーガー
- 特別な空間
- 特別な時間
- 数千万円のベンツに試乗できる特別な体験
自分も特別な扱いをされたい、特別な存在なんだと認識したい。そこを刺激してくれる場所がMercedes meである。
実際個人的にはアウトレット車両であれば買ってもいいかなと思ったが、そこが無駄遣いの入り口だと思う。優秀なマーケッターを抱えるメルセデスは、ラグジュアリーなサービスを提供して、また次に乗り換える車もメルセデスにしたいとそう思わせる。ただでさえ、車でも家でもレベルを落とすのは相当大変になる。だからメルセデス・ベンツに乗り続けるために、働き続けなければならなくなる。私のようなメルセデスにふさわしくない中産階級がベンツオーナーになると、そんな不自由に縛られそうになる気がする。
車はそもそも金食い虫
自動車を所有すると、自動車重量税、車検代、強制保険代、任意保険代、ガソリン代、駐車場代、ローンを組むなら自動車ローンなど家計の負担が格段に増える。これらすべて、自動車を所有していなかったら一切かからない費用だ。その自動車を所有することでどんなリターンを得られるかを考えてから購入すべきだと思う。
高級車が買いやすくなっているということは、メルセデス・ベンツもなりふり構わず一般庶民からお金を出させようということに他ならないから、よく計算して買い物した方がいいと思われる。